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帰還とは?(1)

これまで、帰還という考えかたを理解するために、反転増幅回路・非反転増幅回路を見てきました。イメージを持ってもらったところで、最後に帰還自体の説明です。

試しに、辞書で帰還フィードバック)を引いてみると、

制御系などで、系の出力の一部を入力に戻して出力を制御すること

とあります。反転増幅回路の場合では、出力信号の変化が抵抗 R2 を経由して入力側に伝わり、オペアンプの-端子に戻ってきます。この戻りに対してオペアンプが反応し、期待する出力に自動調整される、という具合になります。

ちなみに、帰還フィードバック)と対比して用いられる用語にフィードフォワードというものがあります。これも辞書で意味を引いてみると、

出力に変動を起こさせるような外乱を予測し、前もって打ち消してしまう制御方式

となっています。出力をおかしくさせる成分を予測して、それを打ち消すような信号を入力信号にあらかじめ混ぜてしまう方式です。
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帰還とは?(2)

帰還を理解する上で使用される図があります。
element37.jpg
ここで、A は利得(ゲインとも言います)、βは帰還率と呼ばれる値です。この図の意味するところですが、

出力 Vo をβ倍して入力側に返します。入力信号 Vin から、出力からのβ・Vo を
引いた信号 Ve を増幅器(オペアンプなど)で A 倍して A・Ve を出力信号 Vo とする


といった感じです。なお、入力信号 Vin と出力からの β・Vo との差の信号を誤差ということがあります。正常な出力からのずれに相当する差の信号を誤差(Error)と表現しているのです。

といわれても、ピンとこないと思います。具体的な例を見てみます。実はこの図は非反転増幅回路を説明するのにピッタリな図です。実際に重ねてみると、
element38.jpg
となります。R1, R2 を上で示した 10kΩ, 20kΩ の場合、A はオペアンプの増幅率(ここではA=1000とします)、βは 10kΩと20kΩの分圧である β=10kΩ/(10kΩ+20kΩ)=1/3 となります。つまり、出力 Vo の 1/3 を入力側に返すという表現になります。

帰還とは?(3)

(2)で見た非反転回路全体の増幅率 Vo/Vin は Vo/Vin=1+20kΩ/10kΩ=3 倍となることをすでに見ました。(非反転増幅回路とは?(1)など)(2)で登場した帰還の図からも同じ結論にならなければなりません。今回は理論ですので数学的に計算すると、
element39.jpg
Vo/Vin~1/βという答えが返ってきます。β=1/3 でしたので、Vo/Vin~3 と同じ結論が得られました。ちなみに、1/A=0 とせず、1/A=1/1000=0.001 と正確に計算した場合、Vo/Vin=2.9910269… となります。こちらも非反転増幅回路とは?(5)で計算した結果と同じです。

帰還とは?(4)

(3)までで、非反転増幅回路を用いて帰還という考え方を見てきました。実は、帰還には2種類あり、非反転増幅回路などはそのうちの1つである負帰還ネガティブ・フィードバック)と呼ばれるものを使っています。ここでは、もう一つの帰還である正帰還ポジティブ・フィードバック)も含めて、もう少し帰還を見ていきます。

負帰還正帰還の差は、出力の一部を戻し入力との差をとった後の誤差信号をどのように処理するかです。

これまで見てきた負帰還出力に発生したずれ(=誤差)を小さくするように自動調整がかかります。これに対して、正帰還は逆にずれを大きくするように制御がかかります

この性質を使って、負帰還入力信号の増幅などに、正帰還発振回路や比較器(コンパレータ)などに利用されます。

帰還とは?(5)

負帰還正帰還の実際の例を見てみます。

負帰還の例として反転増幅回路を、正帰還の例としてヒステリシスコンパレータを用います(ここでは、電源電圧を±5V、オペアンプの増幅率を1000倍とします)。
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図を見ると分かるとおり、違いはオペアンプのプラスとマイナス入力の接続方法だけです。これが違うだけで別の回路、違う形状の出力になってしまいます。

負帰還である反転増幅回路は入力信号を上下さかさまにして振幅(=高さ)を抵抗の比倍(この例では 50kΩ/10kΩ=5倍)にします。もし、出力が期待するところから少しでもずれると元に戻す力が働くことで、期待する出力を維持します。

これに対して、正帰還であるヒステリシスコンパレータでは、オペアンプの出力が変化すると、その変化をさらに広げるような制御が働きます。さらに広がった変化により、さらに変化量が大きくなって…を繰り返し、出力は電源電圧(±5V)まで吹っ飛びます。この性質を2つのアナログ電圧の比較に利用する回路がコンパレータ比較器)です。

帰還とは?(6)

この内容の最後に、正帰還の例であるヒステリシスコンパレータの動作を見ながら、正帰還の動作を確認していきます。回路は(5)で登場したものを使います。

入力が 0V, 出力が -5V だったとしましょう。この場合、Vx=-5/6V~-0.833V になりますので、オペアンプの出力は (-0.833V-0V)*1000倍=-833V となります。実際には、電源電圧である -5V 以下にはなりませんので、出力は -5V になります。これで出力が -5V に確定します。
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次に入力を大きくしていきます。
出力が -5V から変化する境目は入力が 1V のときです。このとき Vx=0V となるので、オペアンプの±入力の電圧差がなくなります(VB=Vx)。ただ、抵抗 10kΩに流れる電流が 50kΩにも流れる関係から出力は -5V のままです。

さらに入力が大きくなり、例えば、1.001V になったとします。このとき Vx は Vx=(1.001V-(-5V))*50k/(10k+50k)+(-5V)~0.00083V にあがります。これによりオペアンプの±入力電圧差が +0.00083V になりますので、出力は +0.00083V*1000倍=+0.83V 変化して -4.17V になります。この変化を受けて Vxは同じ計算により Vx~0.139Vとさらにあがります。これにより出力は +0.139V*1000=+139V 変化しようとします。実際は電源電圧である 5V 以上にはなれないので、出力は 5V になります。この Vout, Vx がどんどん大きくなる現象正帰還の特徴です。
element42.jpg
今は出力が -5V から 5V になるときのものでしたが、逆に出力が 5V から -5V に変化するときは入力電圧が -1V より少し小さくなったときに起こります。現象は符号が変わるだけで同じです。

ヒステリシスとは?

帰還とは?(6)にて、ヒステリシスコンパレータの動作を追いました。ここではそのヒステリシスについて説明します。

通常のコンパレータは基準電圧である VB=0V が判定の境目になりますが、帰還とは?(6)での回路では ±1V とずれていました。このずれヒステリシスです。
element43.jpg
このヒステリシスは入力信号に外部からノイズ成分が混入したときの耐性を上げるためのものです。ノイズの量がヒステリシスで設けられた電圧より小さければ、出力はノイズの影響を受けずに済みます。なお、ヒステリシスコンパレータにおけるヒステリシスの量は2本の抵抗の値で調整できます。

抵抗とインピーダンス

容量とは?(9)にてインピーダンスに触れました。少し詳しく取り上げます。

抵抗レジスタンス)とインピーダンスという用語は似ています。ためしに、それぞれの言葉を辞書で引いてみると、

抵抗レジスタンス):電流の流れにくさのこと

インピーダンス:交流回路におけるフェーザ表示された電圧と電流の比。直流におけるオームの法則の電気抵抗の概念を複素数に拡張し交流に適用したもの

とインピーダンスのほうが難しく見えますが、流れが分かればそんなに難しいものではありません。

容量やコイルなどサイン波(正弦波)電圧を入力した際の電流と電圧の位相が同じにならない素子が交流回路に入っている場合、
この位相のずれも表現できると都合がいいことが多くあります。しかし、抵抗(レジスタンス)を用いたオームの法則 E=IR では位相のずれは表せません。そこで数学者に相談したところ、虚数 j(電気回路では電流 i と混同しないように j が使われます)を使わせてもらってもいいなら複素数に拡張してもいいなら)、オームの法則のまんまの形で位相のずれも表現できますけど…といった流れで登場したのがインピーダンスです。

つまり、電流の流れにくさ+位相のずれの両方を表しているのがインピーダンスです。位相のずれは虚数 j が担当しています。
詳細は「インピーダンス」「ガウス平面・極形式」「フェーザ表示」「オイラーの公式」などを参照してみてください。

波に関する用語

今回は、波(サイン波)に関する用語を掲げます。
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周期
波(サイン波)は決まった形の繰り返しでできており、決まった形1回分にかかる時間を周期といいます。単位は秒です。

周波数
周期の逆数を周波数といいます。周波数は「1秒間に決まった形の波がいくつ現れるか」を表していて、単位は Hz(ヘルツ)です。

振幅
波の中心となる位置から最大値まで長さを振幅といい、Vp で表すことがあります。

Vpp
波の最小値から最大値までの長さを Vpp ということがあります(Voltage peak to peak)。

位相
基準となる波から左右にどれだけずれているかを表す量です。通常、1周期分にあたる時間に 360°を割り当て、基準とする波からの“ずれ”を角度で表します。波が右にずれているときは位相が遅れているといい、-の値となります。逆に左にずれている場合は位相が進んでいるといい、+の値となります。

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実効値
波の値は刻々と変化しますが、それを一定の値とみなした際の値をいいます。実際には、以下に示すように面積が等しくなるように求めた値で、Vrms という単位を用います。なお、サイン波では Vrms = 1 / √2 * Vp の関係があります。
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デシベルとは?(1)

電子回路ではデシベルという単位がよく使われます。デシベルは、例えば、入力電圧振幅と出力電圧振幅のような2つの量の比率を対数で表記したものです。

電子回路で扱う“比率”には様々なものがあり、オペアンプの増幅率が1,000,000倍という場合があるかと思えば、S/N のようにノイズ量が信号振幅の 0.000001倍という場合もあります。デシベルは非常に小さい比率から非常に大きい比率を表現しやすくするために使われる単位です。

デシベルへの変換方法ですが、変換する比率のlog(lnではないので注意)をとり、その値を20倍します

例として、0.1、1、√2、2、3、10の5つをデシベルに換算してみると、

0.1 → 20*log0.1 = -20 dB
1 → 20*log1 = 0 dB
√2 → 20*0.5*log2 = 3.0 dB
2 → 20*log2 = 6.0 dB
3 → 20*log3 = 9.54 dB
10 → 20*log10 = 20 dB

となります。

なお、デシベルにしたときは単位が dB になります。デシベルでは対数を取った後に20倍しますが、これは遮断周波数などででてくる比率√2を整数に近い 3.0dBにしたいためと考えればいいかと思います。

デシベルとは?(2)

次に、0.1、1、√2、2、3、10 以外の数についてデシベルに変換する方法を考えます。対数の性質を考えると、いくつかの変換ルールが出来上がります。

1.1は0dB
2.2は 6dB
3.3は約10dB
4.10は20dB
5.A分の1はAをデシベルにしたものに-をつける(例えば、3分の1=1/3 は 3→約10dB なので、3分の1→約-10dB)
6.√AはAをデシベルにしたものの半分(例えば、√3は 3→約10dB なので、√3→約5dB)
7.元の値が掛け算で表せられる場合は、デシベルでは足し算になる(例えば、6は 6=2*3 と掛け算で表せられるデシベルでは 2*3=6→6dB+約10dB=約16dB になる)
8.元の値が割り算で表せられる場合は、デシベルでは引き算になる(例えば、5は 5=10/2 と割り算で表せられるデシベルでは 10/2=5→20dB-6dB=14dB になる)

これらを使って、次回いろいろなものをデシベルに変換してみます。

デシベルとは?(3)

デシベルとは?(2)で示したルールを使って、いろいろな数字をデシベルに変換してみます。

まずは1から大きくしていきます。

1: 0dB
2: 6B
3: 約10dB
4: 4=2*2 → 6+6= 12dB
5: 5=10/2 → 20-6= 14dB
6: 6=2*3 → 6+約10= 16dB
8: 8=2*2*2 → 6+6+6 = 18dB
10: 20dB
12: 12=2*2*3 → 6+6+約10 = 約22dB
60: 6=2*3*10 → 6+約10+20= 36dB
100: 100=10*10* → 20+20+ = 40dB
1000: 1000=10*10*10 → 20+20+20 = 60dB
10000: 10000=10*10*10*10 → 20+20+20+20 = 80dB
20000: 20000=2*10000 → 6+80 = 86dB
60000: 20000=2*3*10000 → 6+約10+80 = 96dB

これを見ると分かる通り、値が10倍になるとデシベル表記では20大きくなります

次に1から小さくしていきます。

1: 0dB
1/2: -6B
1/4: -12dB
1/5: -14dB
1/8: -18dB
1/10: -20dB
1/60: -36dB
1/100: -40dB
1/1000: -60dB
1/10000: -80dB
1/60000: -96dB

ルール5をそのまま使って、上の値に“-”とつけるだけで変換できます。また、、値が10分の1になるとデシベル表記では20小さくなります
いま何時かにゃ~
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目標であったオペアンプの設計に6年かけて到達しました。ここからは応用的な内容を書ける限り書いていきたいと思います。

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