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RCフィルタとは?(1)

抵抗容量が終わりましたので、次にRCフィルタに移ります。
ここでいうRCフィルタとは抵抗器1つと容量1つからなるパッシブフィルタのうち、ローパスフィルタと呼ばれるもののことです。この回路はシンプルですが、CMOS デジタル・アナログ回路設計においてとても重要です。それぞれについて順に見ていきます。
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直流電圧源と直列接続の充放電特性
CMOS デジタル回路のスピードの基本である充放電特性を見てみます。(抵抗が ON した MOSトランジスタ、容量は MOS トランジスタの寄生容量、 直流電圧源は VDD, VSS です)

まず、充電を考えます。
容量の両端に電荷がない状態から、スイッチをONにして直流電圧源(例えば 3V)をつなぎます。この時、容量の両端の電圧はどのように変化するでしょうか?オームの法則(1)容量とは?(1)で見たように、電流=水流、抵抗器=水路、容量=水を入れる容器ですので、充電の様子は水路で容器に水を入れる様子に例えられます

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RCフィルタとは?(2)

(1)で、充電の様子は水路で容器に水を入れる様子に例えました。ここで、抵抗器=水路には一つ決まりがあったことを思い出してください(オームの法則(3))。

抵抗器にかかる電圧=水路の高さが低くなると、抵抗器=水路の幅は縮小する

つまり、容量=容器 に水がたまる(=容量の両端の電圧が上がる)と、抵抗器にかかる電圧は小さくなるため、水路の幅は細くなり電流量=水量が減ります。そして、容器の目盛=容量の両端にかかる電圧と電源電圧の値が同じになると、抵抗器にかかる電圧はゼロ=水路の幅も水量もゼロとなって、充電=水の追加が終わります。

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RCフィルタとは?(3)

(2)までで充電特性をイメージで追ってきました。ここで時間を横軸、容量の両端の電圧の変化を縦軸としてこれまでのイメージををグラフにします。すると、ステップ応答と呼ばれるグラフが得られます。
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出力電圧 Vout ははじめ電流量=水量が多いため早く電圧が立ち上がりますが、電流量=水量が徐々に減っていくため電圧の変化も徐々にゆっくりになっていきます。

さて、ここで容量値を変えずに抵抗値を2倍、半分にしたらグラフがどうなるか考えます。抵抗値は水路の幅と逆数の関係ですので、抵抗値が2倍、半分になると初めの水路の幅は半分、2倍になります。これより水の量が半分、2倍から始まりますので、充電の時間も半分、2倍になります
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今度は抵抗値を変えずに容量値を2倍、半分にしたときのグラフを考えます。容量値は容器の長さでしたので、容量値が2倍、半分になると容器の長さも2倍、半分になります。初めの水路の幅、つまり初めの水の量は変わりませんので、充電の時間は2倍、半分になります
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RCフィルタとは?(4)

(3)で見たとおり、充電の時間は抵抗値Rと容量値Cに共に比例します。そこで、充電時間を表す方法として、抵抗値Rと容量値Cを掛けた値を考えることにします。この値を時定数τ=R×C(τはタウと呼びます)といいます。単位は[s](秒)です。(3)での例 R=160kΩ, C=1000pF の場合、時定数はτ=160kΩ×1000pF=160μs=0.16ms です。

時定数
を使うと、最終電圧の何パーセントまで充電が進んだかを時定数の倍数で表すことができます。有名な値を載せると、

                  3V+160kΩ+1000pF の場合((3)のグラフの緑線)
 0.69τ →  50%    1.500V への充電は 0.69×0.16ms=0.11ms かかる
 1τ →  63.2%    1.896V への充電は 1.00×0.16ms=0.16ms かかる
 2τ →  86.5%    2.595V への充電は 1.00×0.16ms=0.32ms かかる
 3τ →  95.0%    2.850V への充電は 1.00×0.16ms=0.48ms かかる
 4τ →  98.2%    2.946V への充電は 1.00×0.16ms=0.64ms かかる
 5τ →  99.3%    2.979V への充電は 1.00×0.16ms=0.80ms かかる
 10τ →  99.995%  2.9999V への充電は 1.00×0.16ms=1.60ms かかる

です(グラフが Wikipedia のRC回路にあります)。

CMOS デジタル回路・アナログ回路では例えば、

LからHに切り替わる時間は2τも見れば十分
スイッチドキャパシタ回路にて容量への充電は半クロックで5τはほしい

のように充電時間を表す用語として出てきます。

RCフィルタとは?(5)

次に、放電です。
容量の両端に 3V 電圧がかかった状態から、その電圧分の電荷を抜く現象になります。これは、例えば目盛 3V 分すでに水がたまっている容器から水路を使って水を抜くことに例えられます。
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とはいえ、新しい話はありません。というのも充電と放電は、充電→水の追加、放電→水の抜出と電流の向き=水の流れる方向が違うだけだからです。ですので、ステップ応答のグラフは充電のときの上下さかさまになります。(上下さかさまを強調するために電流の向きを逆にしています)
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時定数の考え方も充電のときとまったく同じになります。

RCフィルタとは?(6)

交流電圧源と直列接続の周波数特性
次に、CMOS アナログ回路の周波数特性の基本となるRCフィルタの周波数特性を見てみます。(アナログ回路では、理想の増幅器とRCフィルタの組み合わせで近似して回路全体の周波数特性を考えます(小信号等価回路))

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RCフィルタの周波数特性は容量の周波数特性に抵抗が加わったと考えます。容量の周波数特性は、容量とは?(4)で見たとおり、三角波と呼ばれる信号電圧で考えました。RCフィルタの周波数特性も三角波を入力信号電圧とすることで、サイン波での特性のイメージをつかんでいきます。

RCフィルタとは?(7)

出発点は、容量とは?(7)で見てきた容量単体における入力信号電圧の周波数と電流の関係のグラフです。まず、入力信号電圧の周波数が低い時を考えます。入力信号電圧の周波数が低いときは容量単体に流れる電流は小さくなります。

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RCフィルタは入力信号と容量の間に抵抗が入った形ですから、容量に流れる電流が小さいと、抵抗のところで発生する E=IR による電圧差も小さくなります。よって、抵抗の両側の電圧はほぼ等しくなります。このことは、

入力信号電圧の周波数が低いとき、RCフィルタの出力電圧が入力信号電圧と同じ

と言えることを示しています。

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RCフィルタとは?(8)

入力信号電圧の周波数を高くします。すると、容量に流れる電流も比例して増えます。このことは、入力信号と容量の間にある抵抗で発生する電圧差がどんどん大きくなることを意味しています。容量に流れる電流の値は入力信号電圧が上がっている(下がっている)間は一定ですから、抵抗の両端で発生する電圧も一定になります。

出力電圧である抵抗の反対側の電圧を入力信号電圧のグラフに重ねると、入力信号電圧が上がっているときは下側に、入力信号電圧が下がっているときには上側に一定の幅でずれた形になります。

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さて、問題はつなぎ目の部分です。このままでは、入力信号電圧の上げ下げの切り替わりで出力電圧が大きく跳ねてしまいます。本当にこのようになるのでしょうか?
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RCフィルタとは?(9)

もちろん大きく跳ねることはありません。この部分はRCフィルタの重要な特性につながりますので、詳しく見ていきます。

まず、入力信号電圧が上がる→下がる の切り替わり部分です。
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入力信号電圧がA、出力電圧がBのところまで進んだとします。このとき抵抗の両端では、入力信号電圧のほうが出力電圧より高くなっていますので、電流の向きは容量を充電する方向になっています。
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この状態は、入力信号電圧がA点を過ぎても続きますので、容量の充電も続く→出力電圧は上がります。この時入力信号電圧は下がり出力電圧は上がる、と複雑ですので、出力電圧は曲線的に変化します。
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RCフィルタとは?(10)

先回の続きです。
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入力信号電圧は下がり出力電圧は上がりますので、やがて入力信号電圧=出力電圧になります(C点)。入力信号電圧はさらに下がりますので、入力と出力の上下関係がひっくり返ります。このことは抵抗に流れる電流の向きがひっくり返ることを意味します。
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この向きは容量を放電する方向なので、出力電圧はC点を超えると下がり始めます。ただ、C点を超えてすぐは、入力信号電圧と出力電圧の差が小さいので、放電用の電流が小さく出力電圧の下がり具合も小さくなります。
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入力信号電圧はこの間もどんどん下がりますので、それに伴い放電電流も出力電圧の下がり具合も増えていきます。そしてD点まで来ると、容量に流れる電流と抵抗での電圧降下がつりあい、入力信号電圧と同じ傾きで出力電圧が下がるようになります。

RCフィルタとは?(11)

逆に入力信号電圧が下がる→上がる の場合も同じ原理です。
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入力信号電圧がE点、出力電圧がF点を過ぎて、入力電圧が上がり始めても、出力電圧のほうが高いため、電流は容量を放電する向きとなり、出力電圧は下がります。G点で入力信号電圧と出力電圧が重なると、入力信号電圧のほうが出力電圧より高くなり、電流の向きがひっくり返ります。これにより、出力電圧も上がり始めます。入力信号電圧がどんどん上がることで、入力信号電圧と出力電圧との差が開き、容量に流れる電流と抵抗での電圧差がつりあうと(H点)、入力信号電圧と出力電圧は同じ傾きで上がります

RCフィルタとは?(12)

長くなりましたが、周波数が高くなった時の入力信号電圧と出力電圧のグラフが出来ました。

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周波数が高くなった時のRCフィルタの特性は入力信号が三角波のとき、3つの領域に分かれます。青と赤で示した領域は入力信号電圧と出力電圧の差が同じままで直線的に変化し、つなぎの緑の領域では曲線となります。

このグラフで大事な点が2つあります。1つは緑の領域での動作により、出力電圧の振幅のほうが入力信号電圧のそれより必ず小さくなることです。もう一つは、出力電圧の横方向の位置が右にずれることです。これは、出力電圧の位相が入力信号電圧のそれより遅れると呼ばれる内容です。

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RCフィルタとは?(13)

入力信号電圧の周波数をさらに高くしてみます。容量単体に流れる電流がさらに大きくなるので、抵抗で発生する電圧がさらに大きくなります。この結果、下に示した通り、青と赤の領域が減り、緑の領域が増えます。また、2つの大事な点については、出力電圧の振幅がより小さくなり位相はさらに遅れます(右にずれます)

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さて、入力信号電圧の周波数をどんどん高くしていったとすると、出力電圧が最終的にどうなるか?を考えます。周波数を高くしたときの変化は、

  ・青と赤の領域が減り、緑の領域は増える
  ・出力電圧の振幅が減少する
  ・出力電圧の位相が遅れる

でした。この変化をどんどん進めていくと、

  ・青と赤の領域はなくなり、緑の領域だけになる
  ・出力電圧の振幅はゼロになる

が最終地点になると考えられます。実際に計算で求めてみてもこれが答えになります。なお、「青と赤の領域はなくなり、緑の領域だけになる」は出力電圧が必ず青と赤の領域を通ることを考えれば「出力電圧の位相は入力信号電圧のそれより90°遅れる」ということと同じになります。

RCフィルタとは?(14)

これで、RCフィルタの周波数特性の両端まで見てきました。

 超周波数→出力電圧は入力信号電圧と振幅・位相とも同じ
 超周波数→出力電圧の振幅はゼロ位相は入力信号電圧より90°遅れる

周波数特性の議論ではこの両端の真ん中にあたる周波数を探し出し、

それより低い周波数では“超低周波数”での特性になる
それより高い周波数では“超高周波数”での特性になる

極端に考えることがあります。この境目の周波数を遮断周波数カットオフ周波数とも)といいます。2つの真ん中にあたる遮断周波数は三角波で言うと、青、赤の領域の右端で出力電圧が入力信号電圧のちょうど半分になるときの周波数になります。

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RCフィルタとは?(15)

遮断周波数では出力電圧が入力信号電圧の半分と便宜的に考えることから、容量をインピーダンスを使って抵抗とみなした時、抵抗と容量のインピーダンス(=抵抗値)が同じ時と表現する人もいます。

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容量の抵抗値に相当する値は1/ωC=1/2πfC ですので、ここから遮断周波数はと計算されます。

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ただし、出力電圧の振幅は入力信号電圧の半分より大きいことに注意が必要です。青と赤の領域では半分とみなせますが、緑の領域があるおかげで振幅は半分より大きくなります。

もうひとつ遮断周波数での重要な特性として、「出力電圧の位相の遅れが90°の半分である45」があります。この内容は、CMOSアナログ回路の位相余裕を考える上での基本となります。

RCフィルタとは?(16)

ここまで三角波でRCフィルタの特性を見てきましたが、サイン波でも同じ考え方です。

遮断周波数も同じ f=1/2πRC位相の遅れも 45°です。サイン波における遮断周波数での出力電圧の振幅は、正確な計算から入力信号電圧の 1/√2倍=0.707倍(デシベル表記で -3.0dB)になります。

なお、入力信号がサイン波のとき、RCフィルタの出力電圧もきれいなサイン波(歪なし)になります。三角波では形が変わる(とんがりがなくなっていく)のとは対照的です。


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RCフィルタとは?(17)

最後に、サイン波における周波数特性F特)のグラフを見ていきます。

グラフには2種類あります。

一つは、横軸を入力信号電圧の周波数、縦軸を出力電圧の振幅と入力信号電圧のそれの比率ゲインとか利得と呼ばれるものと同じ)とします。普通のグラフで記述すると、遮断周波数を境に、左側が 0.707 まで緩やかに下がる曲線、右側が反比例のグラフとなります。

もう一つは、横軸は同じく入力信号電圧の周波数、縦軸は出力電圧の位相ずれ(通常、入力信号電圧より位相が進んだ場合をプラスとします)とします。こちらは普通のグラフで記述すると、遮断周波数で-45°(45°遅れているとなります)となるような緩やかな曲線となります)

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ただ、このグラフは見にくいため、通常は上のグラフのうち位相ずれ以外を対数で表示したボード線図ボーデ線図)と呼ばれるグラフにします。ここで、出力電圧の振幅と入力信号電圧のそれの比率をそのまま対数にすると値が小さくなるので、縦軸を20倍にしたデシベル表記(dB)にします。

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こうすると、グラフがほぼ直線で構成されます。遮断周波数での比率は -3.0dB です。なお、比率のグラフの斜めの直線の傾きは-6dB/oct(周波数が2倍になると比率は-6dB下がる(=1/2になる)という意味)とか、-20dB/dec(周波数が10倍になると比率は-20dB下がる(=1/10になる)という意味)とか呼ばれています。

位相ずれのグラフからは、
遮断周波数の 1/10 の周波数まではほぼ 0°(=位相ずれなし)
遮断周波数で 45°
遮断周波数の10倍の周波数ではほぼ 90°遅れることが分かります。

RCフィルタとは?(18)

やっと最後のRCフィルタです。

ひとつ前のRCフィルタは入力信号が電圧(正確には理想電圧源)でしたが、今度のものは、入力信号が理想電流源と呼ばれるものです。記号はただの矢印ですが、直流電流源交流電流源(単純にはサイン波の形をした電流)にも使われます。ここではサイン波の形をした交流電流源を表します。

なお、この記号の意味は、こちらが考える量の電流を矢印の向きに理想的に流すというものです。

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今回は入力信号が電流ですので、イメージ的には

ある決まった量の水(=電流)がRCフィルタに供給されたとき、出力電圧はどうなるか?

を考えることになります。蛇口からある決まった量の水が出ている先に、抵抗と容量がつながっている時、その高さ=出力電圧はどうなるか?といったところでしょうか?

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なお、この形のRCフィルタでは、周波数特性のみを考えます。(過渡応答を考える場面がCMOS アナログ回路では出てこないからです)。

RCフィルタとは?(19)

この形のRCフィルタの周波数特性も、前の形と同じく容量を中心として考えると分かりやすくなりますRCフィルタとは?(7)以降)。そして、周波数が極端に低いときと高い時を考えてみます(RCフィルタとは?(14))。

まず、周波数が極端に低い時を考えます。

周波数が低いときは、容量にほとんど電流が流れませんRCフィルタとは?(7))。ということは、入力信号電流源(=蛇口)から供給される電流がほとんどすべて抵抗に流れます。このことは容量がないのと同じになりますので、出力電圧は入力信号電流 Iと抵抗 R をかけた、出力電圧=IR となります(オームの法則)。なお、出力電圧の位相は入力信号電流源のそれと同じになります(位相遅れなし=0°)。

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RCフィルタとは?(20)

次に周波数が極端に高い場合を考えます。

周波数が高い場合、容量に流れる電流は非常に大きくなります。入力信号電流源(=蛇口)から供給される電流はある決まった量のため、容量が必要とする電流量より少なくなります。これは、電流がすべて容量に流れることを意味しますので、抵抗がないのと同じ状態になります。

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従って、出力電圧振幅は容量に入力信号電流が流れたとした I/ωC に、出力電圧の位相は入力信号電流源の位相より90°遅れることになります。(容量とは?(5)の場合の逆)こうなると、入力信号の周波数が上がれば上がるほど出力電圧振幅は小さくなります(反比例)ので、周波数が極端に高いとき、出力電圧の振幅はゼロになってしまいます。
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目標であったオペアンプの設計に6年かけて到達しました。ここからは応用的な内容を書ける限り書いていきたいと思います。

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