FC2ブログ

寄生成分について(1)

CMOSアナログ回路で登場する素子を構成する要素は抵抗や容量成分を含みます。 これらは通常回路図上に書かれていないため、寄生抵抗とか寄生容量と呼ばれます。 寄生抵抗や寄生容量自体は小さな値ですが、回路の周波数特性やスピード等を決める 重要な役割を果たしています。これからその寄生成分について見ていきます。

(1)抵抗と容量の値と単位
LSIでの抵抗や容量の単位は少し特殊なので、まず記載します。

・ 抵抗
プロセスから正方形あたり(例えば1μm×1μm当たり)の抵抗値(シート抵抗と言います)が 示されます。全体の抵抗値 R とシート抵抗 R (単位は Ω/□)、抵抗を構成する成分 (Poly やメタルなど)の幅, 長さとの関係は以下の通りです。

R=R×(長さ)÷(幅)

・容量
プロセスから1μm×1μm あたりの容量値 C(単位は fF/μm2)が示されます。 作成した容量全体の容量値Cは実際のレイアウト面積を掛けることで算出します。

C=C×(実際のレイアウト面積)
スポンサーサイト



寄生成分について(2)

ここから、素子ごとに寄生成分を見ていきます。

(2)MOS トランジスタ
MOS トランジスタにはたくさんの寄生抵抗・寄生容量があります。順に見ていきます。

(A)寄生抵抗
拡散層・基板・ウェル・コンタクト・ゲート・メタルなど、半導体の構成要素はすべて抵抗と見なせます。

ele8_9.jpg

拡散層は普通の抵抗(拡散抵抗)として用いられることもありますが、ソースやドレインとしての拡散抵抗は大電流が流れるとき以外にはあまり考慮されません。

基板やウェルも抵抗として用いることができますが、この抵抗成分はラッチアップの原因であったりノイズの伝達役であったりとアナログ回路としてはあまり使われません。

コンタクトの抵抗値は意外と大きく見過ごされやすいものの一つです。コンタクトの数が少ないと、大きな抵抗成分がついてしまい、誤動作の原因になることもあります。

ゲートポリももちろん抵抗と見なせます。ゲートのWを大きくすると充電に時間がかかるため、Wを分割することでスピードを上げる処置を施すこともあります。
 
なお、これら寄生抵抗はシミュレーションのトランジスタモデルに含まれていないことがほとんどです。寄生抵抗成分がないことで実動作とシミュレーション結果が合わない場合は、モデルに抵抗成分を加える必要があります。

寄生成分について(3)

MOS トランジスタの寄生成分の続きです。

(B)寄生容量
MOS の構造は多層構造のため、いたるところに平行板容量とみなせる寄生容量が存在します。

ele8_10.jpg

酸化膜容量 Cox は、トランジスタの電流式等回路特性を決める際に登場する容量です。

Cgs(ゲート-ソース間容量)、Cgd(ゲート-ドレイン間容量)は、ゲートとソース、ドレインがほんのわずか重なっていることにより発生する容量です。(チャネルを通じてドレイン-ソース間が確実につながるように、必ず重なるように製造します)しかし、これらの容量(特に Cgd)はアナログ回路の周波数特性を決定する重要な要素となります。

Cgb(ゲート-基板間容量)は、ゲートとチャネルの下面(基板の最上面)との間の容量です。Cgs, Cgd 同様周波数特性に影響を与えますが、効果は小さいです。

フリンジ容量(ゲート-A.A.間)は、ゲートの側面とA.A. の上面との間の容量です。Cgs, Cgd の一部と考えらます。

接合容量はP型-N型半導体が逆バイアスとなるために発生する空乏層容量です。(PN接合とは?(7)参照)ドレイン側の接合容量はいわゆる“負荷容量(字のごとく回路から見て重荷となる容量のこと)”になるため、できるだけ負荷容量の少ないレイアウトを意識する必要があります。また、ドレインやソースで電圧(電流)の変化があると、その変化が接合容量を通って基板に交流電流として伝わってしまいます。基板経由によるノイズ発生メカニズムの1つです。

なお、これら寄生容量はシミュレーションのトランジスタモデルに通常含まれています

寄生成分について(4)

(3)抵抗素子
 LSI 内の抵抗素子の場合、抵抗をなしているポリ等とその下層との間の寄生容量がよく問題になります。なお、ポリ等の下面全体が平行板容量となるため、寄生容量が抵抗の中にどう“寄生”しているとするかを設計者が考える必要があります。

ele8_11.jpg

単純な考え方は、両端に半分ずつ寄生している、真ん中にすべて寄生しているとするものですが、抵抗を適当数に分割しそれぞれに対して寄生しているとすることでより精度を高めることもあります。

これ以外にも、2つの抵抗同士の横方向の寄生容量とか、ポリ等とその上層(配線とか)の寄生容量というのも考えられます。

寄生成分について(5)

(4)容量素子
 LSI 内の容量素子の場合、容量をなしている層とその上下層との間の寄生容量が重要です。

特に上層の寄生容量と下層の寄生容量の間に大きな差がある場合、回路上、容量をどちらの向きで接続するかが重要となります。

例えば、オペアンプの位相補償容量ではオペアンプ出力側を寄生容量の小さい端子にすることで負荷容量を減らす、などです(後述します)。

容量自体にも寄生抵抗成分は存在します(コンタクトも注意)。通常は容量の充電速度に支障が出ないような形状にします。L字型とか4角形ではない形は不均一になりやすいためあまり使われません。

ele8_12.jpg

寄生成分について(6)

(5)配線
配線やそれをつなぐビアやコンタクトは、アナログ回路のレイアウトを行う上で最も気をつかいます。配線に含まれる寄生抵抗・寄生容量、ノイズの動きなどをどれだけ読めるかが特性を決める勝負になります。もちろん、これらの成分は回路図からのシミュレーションには含まれないため、実動作で特性が得られない場合は特に注意が必要です。

(A)寄生抵抗
配線もそれ自体が抵抗です。抵抗値は通常無視できるほど小さい値です。
しかし、大電流が流れる配線の場合、メタルを何層も重ねたりビアの数をできるだけ多く打ったり等、抵抗値を下げる工夫をするようなこともあります。

(B)寄生容量
以下の3種類のものをよく見かけます(名前については製造プロセスで違う場合があります)。

ele8_13.jpg

これら容量を介して、隣の配線の電圧(電流)変化がノイズとして入り込んでしまいます。特に、クロック線が隣にある場合には誤動作を間違いなく引き起こします。狭い領域の中で配線の引き回しをどのようにするかも、設計者の技量の一つと言えます。
いま何時かにゃ~
これまでの来場者数
単語の検索はここで
プロフィール

たみひかのろ

Author:たみひかのろ
見にきてくれてありがとう
目標であったオペアンプの設計に6年かけて到達しました。ここからは応用的な内容を書ける限り書いていきたいと思います。

ツリーカテゴリー
リンク
一休みにどうぞ
by mitti0