FC2ブログ

実際の小信号等価回路(1)

実際の小信号等価回路

これまで

Vgs のみを変えた時は gm
Vds のみを変えた時はドレイン抵抗 rd

定義することでトランジスタの小信号等価回路を表現することができることを見てきました。

しかし実際の回路では、 Vgs を変えると Vds も同時に変化してしまいます。
そこで、Vgs と Vds が結果として一度に変化するときの小信号等価回路
(通常、小信号等価回路というとこの回路のことを指します)を考える必要があります。

といっても話は難しくなく、Vgs と Vds が一度に変化する際は、

Vgs と Vds での変化を別々に扱い、その結果を足し合わせる

で近似します(数学で言うところの全微分です)。
これを回路で表すと、今考えているのが電流の変化量であるため、

それぞれの小信号等価回路を並列接続する

ということになります。
スポンサーサイト



実際の小信号等価回路(2)

例えば、ある NMOS トランジスタにおいて

Vgs = 2.00V, Vds = 3.0V, Ids = 48.0uA の状態から
Vgs = 2.01V に変化し、その結果 Vds = 2.9V となった

としましょう。この際の Ids はどうなるでしょうか?
ele9_39.jpg

Vds は変わらないとしてVgs = 2.00V からVgs = 2.01V に変わった場合は
gmとは?(2)で見た通り、gm = 0.001S から
ΔIds = gm×ΔVgs = 0.001S * 0.01V = 10uA となります。

これに対し、Vgs は変わらないとしてVds = 3.0V からVds = 2.9V に変わった場合は
ドレイン抵抗とは?(1)で見た通り、rd = 1MΩ から
ΔIds = 1/rd×ΔVds = 1/1MΩ * (-0.1V) = -0.1uA となります。

よって、Vgs = 2.01V に変化し、その結果 Vds = 2.9V となった場合には、
2つの結果を足し合わせて ΔIds = 10uA + (-0.1uA) = 9.9uA と近似します

これから、Vgs = 2.01V に変化し、その結果 Vds = 2.9V となった際の電流量は
Ids = 48.0uA + 9.9uA = 57.9uA と計算することができます。

以上の内容を回路で表すと以下のようになります。

ele9_40.jpg

実際の小信号等価回路(3)

ここで、並列接続した回路図を用いて、変化する前の状態
(Vgs = 2.00V, Vds = 3.0V, Ids = 48.0uA)を表す回路図を示すと、
ele9_41.jpg
となるので、共通部分=直流成分省略して小信号等価回路を導き出します。
ここでもともとの VG = 2V を明確に表記した場合、VG とドレイン抵抗の下にある
VD= 3V を省略しても、回路の変化分=交流成分を表すことができることに
注意してください(アナログ回路の基礎(4))。

ele9_42.jpg

実際の小信号等価回路(4)

結局、実際に用いるNMOS トランジスタの小信号等価回路は以下のようになります。
(厳密には、基板効果を示す gb が入りますが、ここでは割愛します)
ele9_43.jpg
ここに示したドレインやゲート、ソース端子での電圧は実際の電圧ではなく、
変化分だけを表していることに気を付けてください。

PMOS トランジスタの実際に用いる小信号等価回路は向きを逆にするだけで得られます。
ここで、PMOS, NMOS の小信号等価回路は向きの違いがあるが、構造はまったく同じになります。
ele9_44.jpg

このようにして導き出された小信号等価回路を用いると、アナログ回路を設計することが
容易になります。この小信号等価回路をしっかり理解できれば、回路図を見ただけで
回路の性能をある程度把握することができる
ようになります。
いま何時かにゃ~
これまでの来場者数
単語の検索はここで
プロフィール

たみひかのろ

Author:たみひかのろ
見にきてくれてありがとう
目標であったオペアンプの設計に6年かけて到達しました。ここからは応用的な内容を書ける限り書いていきたいと思います。

ツリーカテゴリー
リンク
一休みにどうぞ
by mitti0