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カレントミラー(1)

ここから基本回路について見ていきます。まず、カレントミラーです。

CMOS アナログ回路において、入力信号は基本的に電圧です。
その入力電圧 ΔVgs をゲート端子で受けてドレイン電流 ΔIds に変換し(変換係数が gm です)、ΔIds を抵抗成分に流すことで出力信号に変換します。ここで出てきた抵抗成分の代表格がカレントミラーと呼ばれる回路です(本当の抵抗を用いてもいいのですが、大きな面積を取るためあまり用いません)。

ここでは、順にカレントミラーについて見ていきます。

カレントミラーとは、名前の通り“電流の鏡”です。
ある値の電流を発生させる回路(基準電流源などと呼ばれます)を通して、
他の回路に電流を鏡のようにコピーする回路です。

基準電流源から順を追って見ていきます。

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カレントミラー(2)

最も簡単な基準電流源は抵抗とダイオード接続したトランジスタからなります。

ダイオード接続とは、トランジスタのドレイン端子とゲート端子をつなぐことです。
ドレイン電圧=ゲート電圧がトランジスタのしきい値電圧 Vth を超えると、
Vgs-Ids 特性に従った電流が流れます。
その様子がダイオードのように見えるためこの名前がつけられています。

ele10_2.jpg

次に、ダイオード接続したトランジスタが基準電流源となる様子を見てみます。

まず、抵抗とダイオード接続したトランジスタに電流が流れていない状態からはじめると、
トランジスタのゲート電位は VDD になります。
(電流ゼロ=抵抗での電圧降下ゼロ=トランジスタのドレイン・ゲート電圧は VDD)
これにより、トランジスタに大きな電流が流れようとします。
しかし、抵抗で電圧降下が起こり、ゲート電圧が VDD から下がります。
最終的に、ゲート電圧がある値の電圧で落ち着き、トランジスタと抵抗に同じ電流が
安定して流れるようになります(逆にトランジスタの電流が少なくなりすぎた場合は、
抵抗での電圧降下が減りゲート電圧の値が上昇=トランジスタの電流が増えます)。

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カレントミラー(3)

ここで、トランジスタにある値の安定した電流を流すために必要なゲート電圧が VB に“保存されている”ことに注意してください。これは、ダイオード接続したトランジスタと同じ L, W サイズのトランジスタのゲート端子にVB を入力すると、同じ電流が流れる ことを意味します。これが電流の“コピー”の正体で、VB が入力されたトランジスタ群はカレントミラーと呼ばれます。
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ダイオード接続したトランジスタと同サイズのトランジスタであれば同じ電流が流れますが、例えば、ダイオード接続したトランジスタと同サイズのトランジスタを2個でコピーを行えば、(原理的には2倍のWサイズのトランジスタでいいのですが、現実には電流の値に誤差を 生じる可能性が高くなります) 電流は基準電流の2倍になります。

こうすることで、基準電流源の整数倍の電流が流れる電流源を作成することができます
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カレントミラー(4)

次に、カレントミラーの特性を見てみます。

例えば、ダイオード接続したトランジスタのゲート電圧が 1.0V で、基準電流源を流れる電流が 25uA だったとします。このとき、コピーした側のトランジスタの Vds-Ids 特性は以下のようになります。
ele10_6.jpg
まず Vds = 1V の時、25uA 流れます。これはダイオード接続したトランジスタとまったく同じ状態になるからです。それ以外の Vds に対してはドレイン抵抗による傾きで変化します。(この現象は、出力インピーダンスがドレイン抵抗になると言い換えられます)このことは、“コピーの精度を上げるためには、ドレイン抵抗を大きくする必要がある”ことを示しています。また、Vds が Vov 以下の時には電流量が急激に落ち、コピーすらできなくなります

これらは、オペアンプの性能や動作範囲を考える上で非常に重要な性質です。

カレントミラー(5)

これらの現象を小信号等価回路でも確認してみます。

実際の小信号等価回路(4)で見たNMOS トランジスタの小信号等価回路を当てはめると
以下のようになります。
ele10_7.jpg

ゲート電圧は一度 VB で落ち着くと変化しない=VB は直流成分と同じ=交流成分はゼロ
ということで ΔVgs=0 になります。
これにより小信号等価回路の電流源の電流値が常にゼロとなるので、電流源はないのと
同じになります。
これにより、カレントミラーの小信号価回路はドレイン抵抗のみとなるのです。
ドレイン抵抗は数百キロΩ以上になるよう設計することが多いため、小さい面積で
非常に大きな抵抗が得られることにつながります。

なおダイオード接続したトランジスタですが、ゲート電圧=ドレイン電圧のため、
小信号等価回路の電流源の式が ΔIds = gm×ΔVgs → ΔIds = gm×ΔVds になります。
書き換えると、ΔVds = 1 / gm×ΔIds となり、電流源が抵抗値が 1 / gm の抵抗と
同じとなります。gm は通常数千分の1から数百分の1のため、抵抗値(1 / gm)は
数百Ωから数kΩ
となります。ドレイン抵抗より3ケタほど低い値なため、
ダイオード接続したトランジスタは実質的に抵抗値が 1 / gm の抵抗と同じ
考えてよくなります。
ele10_8.jpg

カレントミラー(6)

なお、カレントミラーは PMOS トランジスタでも同じように作ることができます。
ele10_9.jpg
また、NMOS トランジスタでコピーした電流を PMOS トランジスタでコピーしなおすこと
(逆も含めて)もよく行います。この際、ダイオード接続した PMOS トランジスタを
配置することで、ゲート電圧 VBP を保存して、PMOS での電流コピーを可能にしています。
ele10_10.jpg
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たみひかのろ

Author:たみひかのろ
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目標であったオペアンプの設計に6年かけて到達しました。ここからは応用的な内容を書ける限り書いていきたいと思います。

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