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ソース接地回路(1)

ここからは CMOS アナログ回路の基本となる3つの回路、

ソース接地回路ソースフォロアドレイン接地回路)・ゲート接地回路

を見ていきます。まずは、その中で最も重要なソース接地回路を見ていきます。

ソース接地回路 
ソース接地回路とは、MOS トランジスタのドレイン端子と電源の間に適当な大きさの抵抗を入れた回路です。ソース端子の電圧がまったく変わらない交流的に接地していると表現します)ため、この名前がついています。

ここで、ゲート端子を入力、ドレイン端子を出力としたとき、ソース接地回路は増幅回路として働くため、オペアンプには必ずある回路です。

ソース接地回路は NMOS トランジスタでも PMOS トランジスタでも作ることができ、基本的な動きはまったく同じです。

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ソース接地回路(2)

(1)ソース接地回路の動作原理

 NMOS トランジスタを用いたソース接地回路を使って、ソース接地回路の動作原理を考えてみます。(PMOS トランジスタを用いた場合も同じです)

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 まず初めに、入力端子 IN に 0V から VDD(ここでは仮に 5V とします) までの電圧を入力した際、出力端子 OUT の電圧がどうなるか見てみます。

 IN 端子の電圧が NMOS トランジスタのしきい値電圧 Vth 以下の場合、NMOS トランジスタには電流が流れません。よって、抵抗にも電流が流れず OUT 端子の電圧は5V(VDD) となります。
 IN 端子の電圧がしきい値電圧 Vth を超えると、NMOS トランジスタに電流が流れ始めます。これにより抵抗にも同じ量の電流が流れ、電圧降下が起き、OUT 端子の電圧は 5V(VDD) から下がっていきます。
 IN 端子の電圧がさらに上がると、NMOS トランジスタに流れる電流が増え、OUT 端子の電圧はますます下がっていきます。そして、IN 端子の電圧がある電圧以上になると、抵抗の電圧降下がほぼ 5V=VDD となってしまい、OUT 端子の出力がほぼ 0V となります。

これをIN 端子の電圧を横軸、OUT 端子の電圧を縦軸としたグラフに表すと以下のようになります。

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ソース接地回路(3)

次に上のグラフから、ソース接地回路の増幅作用(=振幅を拡大する作用)を見ていきます。ソース接地回路(2)でのグラフを大きく3つのブロックに分けて考えていきます。

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A の中にある 0.5V を中心として振幅 0.01V のサイン波を IN 端子に入力したときのOUT 端子の電圧を考えると、0.49V でも 0.51V でも OUT 端子の電圧は 5V となっているため、IN 端子にサイン波を入力しても OUT 端子の電圧は 5V のままです。

同様に C の中にある 3V を中心として振幅 0.01V のサイン波をIN 端子に入力したときは、出力はほぼ 0V のままです。こうした現象はクリッピングと呼ばれます。クリッピングが起こると入力信号を出力に伝えられなくなるので気をつける必要があります。

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ソース接地回路(4)

これに対し、B の中にある 1V を中心として振幅 0.01V のサイン波をIN 端子に入力したときは状況が違います。グラフから分かるとおり、0.99V, 1.00V, 1.01V で値がかなり違うからです。

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 詳しく見てみると、IN 端子の電圧が 1.00V から 0.01V 上昇し 1.01V になると、OUT 端子の電圧は 2.5V から 0.5V 減少し 2.0V になります。ここで変化量だけを見ると 0.01V から 0.5V と50 倍に増えています。このことは 1.00V から 0.01V 減少し 0.99V になったときも同じです。

 このことは、1V を中心として振幅 0.01V のサイン波を IN 端子に入力すると、OUT 端子の電圧は 2.5V を中心として振幅 0.5V になることを示しています。ただし、サイン波がさかさまになる(位相が 180°ずれる(逆相と言います))ことに注意が必要です。

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これが、ソース接地回路が入力信号を増幅する仕組みです。

ソース接地回路(5)

もうひとつ重要な性質があります。
先ほど、振幅が50倍になると言いましたが、これは

X-Z 間のグラフが直線である

必要があります。もし、X-Z 間のグラフが曲線になっていると、
出力電圧波形はサイン波からくずれてしまいます。

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ここで、出力電圧波形がサイン波からくずれることを出力電圧波形がひずむといいます。
また X-Z 間が直線のとき、その傾きが増幅率になります。
傾きにマイナスの符号がつくことになりますが、これはサイン波がさかさまになることを表しています。


最後にソース接地回路についてまとめます。

1)あるバイアス電圧を中心とした振幅の小さいサイン波(交流信号)を入力信号として入力すると、別のバイアス電圧を中心とした振幅が増幅されたサイン波が出力されます。位相については 180° さかさまになる逆相です。

2)増幅を正しく行うためには、入力-出力特性を表すグラフの中で直線となっている部分を用いる必要があります。その直線の傾きが増幅率です。また、直線でない部分を用いると出力電圧波形がひずみます

ソース接地回路(6)

(2)小信号等価回路による解析

次に、先ほどのソース接地回路の動作を小信号等価回路で考えます。
ここで、抵抗の抵抗値は 100kΩ とします。

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IN 端子にバイアス電圧 Vgs = 1.0V を入力したとき、OUT 端子の電圧は
2.5V だったので、下に示した回路で gm を求めることになります。

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ここでは、仮に gm = 0.0005 S だったとします。

ソース接地回路(7)

1)ドレイン抵抗を考えない場合
まず、ドレイン抵抗がない(=電流源のみの)小信号等価回路で考えます。

100kΩ の抵抗を入れた状態で、gm やドレイン抵抗を求めたのと同じ方法で
(gmとは?(4)ドレイン抵抗とは?(2)
ソース接地回路の小信号等価回路を導いてみます。
まず VG = 1.00V の状態では、以下のようになっています。

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ここで、ゲート電圧が VG = 1.01V に変化すると、gm で表された電流源に
gm×ΔVgs = 0.0005S×0.01V = 5uA の電流が流れます。
この電流は VDD から供給されるので、抵抗に流れる電流は 25 + 5= 30uA となります。
よって、出力電圧は 5V – 30uA×100kΩ = 2.0V に下がります。

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ソース接地回路(8)

ここから、gm やドレイン抵抗のときと同じく共通部分を省略して、変化分だけを表した小信号等価回路にします。ここで、VDD, VSS はまったく変化しないので(=直流成分なので)、とりあえず、’0V’ で置き換えました。出力電圧は 2.0V – 2.5V = -0.5V となります。

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さらに、’0V’ と 接地マークは同じ意味なので、接地マークに置き換えて整理すると
以下のようになります。
(抵抗が上下さかさまになりましたので、電流の向きが逆になっていることに注意してください)

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これが、これまで見てきたソース接地回路の(ドレイン抵抗がない)小信号等価回路になります。なおこの図ですが、

ΔVgs=0.01V により ΔIds=5uA が発生し、その電流が 100kΩに流れることで出力電圧の変化分 -0.5V が発生している

と表現することができます。

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ちなみに、この赤で示した電流の流れを、直流成分を省略する前の図(VDD=5V の電源を意識して明示してあります)に記載すると、

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となります(青の流れは直流電流 25uA です)。比較してみてください。

ソース接地回路(9)

最後に、この小信号等価回路から増幅率利得ゲイン)がどう計算できるか考えてみます。

OUT 端子電圧の変化分を ΔVOUT、IN 端子電圧の変化分を ΔVIN で表すと、
増幅率は ΔVOUT を ΔVIN で割った値となります。よって、増幅率を AV で表すと、
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と 50 倍となります。ここでマイナスの符号はソース接地回路(5)の時と同様、
サイン波がさかさまになることを表しています。

さてここで小信号等価回路を見ると、ΔVOUT = -0.5V = ( -5uA ) ×100kΩ でした。
(抵抗に流れる電流がさかさまになっていますので、符号はマイナスになります)
また、gm×ΔVgs = gm×ΔVIN = 5uA であることに注意してください。
この関係を ΔVOUT の式に代入し、抵抗を R = 100kΩ で表すと、
ΔVOUT = ( -1 )×gm×ΔVIN×R となります。これから、増幅率AV は、
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となります。これは、ソース接地回路の増幅率が MOS トランジスタの gm
ドレイン端子につながった抵抗の抵抗値の積で表されることを示しています。
(くどいようですが、ドレイン抵抗がないときの式です)

ソース接地回路(10)

2)ドレイン抵抗も考える場合
より正確にドレイン抵抗もある場合も見てみます。

1)での100kΩの抵抗を使ったソース接地回路において、ドレイン抵抗が 100kΩ より
非常に大きい
という理由から、ドレイン抵抗を実は無視しました。
これを正確な小信号等価回路を使って確認してみましょう。

例えば、NMOS トランジスタのドレイン抵抗が rdn = 2MΩ だったとしましょう。
その場合の小信号等価回路は順を追って以下のようになります。
(小信号等価回路を理解しやすいように電流値等は計算したものを先に入れました)

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ソース接地回路(11)

得られた小信号等価回路を見ると、もともとの100kΩ とドレイン抵抗 2MΩ の合成抵抗
考えることで1本の抵抗に置き換えることができそうです(合成抵抗とは?(1))。
実際にやってみると、下の式から

ele10_29.jpg

95.2kΩが合成抵抗値ですので、

ele10_28.jpg
ということになります。
この最後の小信号等価回路は抵抗値が若干変わりましたが、ドレイン抵抗がないときの
ものと同じ
になります。つまり、より正確な増幅率は、

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と 47.6倍となります。この値は 50倍とほとんど変わらないため、抵抗素子を使った場合の
ソース接地回路の増幅率はドレイン抵抗による影響を無視しても差し支えないということに
なります(電子回路では -3dB=0.707倍以下になると増幅率が落ちたと考えることが多い
ため、このくらいは誤差ということになります)。

また、増幅率を表す一般式も合成抵抗に置き換えた、

ele10_31.jpg

ということになります(// という記号は並列接続の合成抵抗を表します)。

ソース接地回路(12)

(3)抵抗を MOS トランジスタで置き換える

これまでのソース接地回路はドレイン端子に抵抗値の高い抵抗を接続していました。
しかしこれを LSI 上で実現しようとすると、非常に大きな面積が必要になります。

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これでは LSI 全体の面積が肥大化してしまいますので、カレントミラー(5)で説明した
カレントミラーの小信号等価回路であるドレイン抵抗を使うことを考えます。
(これで上図の右側のサイズにすることを狙います)

回路ですが、カレントミラー(3)(6)での回路と組み合わせて以下のようになります。

ele10_33.jpg

ソース接地回路(13)

次に、小信号等価回路を見てみましょう。

NMOS 入力の回路(基準電流源は省略します。)で確認してみます。
ここで、NMOS トランジスタの特性は gmn = 0.0005S, rdn = 2MΩでした。
今回はさらに PMOS トランジスタの特性を gmp = 0.0003S, rdp = 1MΩ とします。

いつもと同じく直流成分も含めた回路図から始めます。
なお、カレントミラーであるPMOS トランジスタのゲート電圧は仮に 4V とします。

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PMOS の電流の矢印の向きは gmとは?(5)で説明したとおり逆向きですので
注意してください。カレントミラー側のPMOS トランジスタのゲート電圧は変化しないため、gm で表された電流源には電流が流れません。
よって、直流成分と一緒にPMOS トランジスタの gm で表された電流源は省略します。

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ソース接地回路(14)

図を整理し‘0V’を接地マークに変えれば、小信号等価回路が得られます。

ele10_36.jpg

ソース接地回路(11)と同じく、合成抵抗を考えると、

ele10_36_2.jpg

と計算できるので、最終的な小信号等価回路は以下のようになります。

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ソース接地回路(11)での等価回路と比べると、カレントミラーを使うことで
抵抗値が7倍に増えました。レイアウトサイズもずっと小さいため、
LSI ではこのカレントミラーによる置き換えがよく行われます。

ソース接地回路(15)

最後に、IN 端子に信号を入れた場合を見てみます。

IN 端子の電圧が例えば 1.00V から 1.001V に変わったとすると、gm で表された電流源に
gm×ΔVin = 0.0005S×0.001V = 0.5uA の電流が流れます。
この電流はNMOS, PMOS トランジスタのドレイン抵抗を並列接続した合成抵抗に流れるので、OUT 端子の電圧の変化分は ΔVOUT = 667kΩ×( -0.5uA ) = -0.333V と計算されます。お分かりの通り、この回路の増幅率は333 倍に増えます。(増幅率も7倍になりますので、IN端子の変化を一桁下げました)

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なお、これらの状況をもともとの回路図で表すと以下のようになります。
比較してみてください。

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ソース接地回路(16)

これまで、NMOSトランジスタに入力しているタイプばかり見てきましたので、
PMOSトランジスタに入力するタイプも見てみます。

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小信号等価回路は NMOS入力のものと全く同じになります。
ただし、gm は PMOS のものになりますので、gmp = 0.0003S とすれば
増幅率は Av=200倍になることに注意してください。

カレントミラーを使ったソース接地回路はオペアンプの最も重要な構成要素です。
ソース接地回路が理解できれば、オペアンプもすぐに分かりますので、ぜひ理解してください。

ソース接地回路(17)

(4)インバータ回路
 デジタルの基本回路であるインバータ回路はソース接地回路の応用形と表現されることが
ありますので、ここで見てみます。
 インバータ回路は NMOS, PMOS トランジスタのゲート端子をつないで入力とし、
ドレイン端子をつないで出力とした回路です。
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ソース接地回路からインバータ回路への流れの一つとして、

2つのソース接地の入出力端子を接続し、VDD-VSS 間にある形になる抵抗を削除すると

いうものがあります。
(抵抗を削除するというのはVDD-VSS 間に電流を流しているだけのように見えるからです)

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ソース接地回路(18)

次に、小信号等価回路を見てみましょう。

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 NMOS, PMOS トランジスタ両方が入力であることに注意すると、NMOS, PMOS トランジスタの電流源が足し算の形になっている以外はカレントミラーを使ったソース接地回路と同じ形であることが分かります。
 よって、増幅率 Av も PMOS と NMOS の gm を足し算とした形になります。

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 これまでの定数(gmn = 0.0005S, rdn = 2MΩ, gmp = 0.0003S, rdp = 1MΩ)としたら、増幅率は Av=-533 となります。

ソース接地回路(19)

最後に、ソース接地回路(2)で使用した入出力特性のグラフを使って、
インバータ回路の特性を確認してみます。

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ソース接地回路(この図は抵抗負荷のものです)は入力トランジスタのしきい値電圧 Vth
超えると反転が始まります。インバータ回路の場合、出力が VDD/2 になる電圧をしきい値
電圧(仮にここでは Vinv します)と言いますが、この Vinv は NMOS, PMOS それぞれの
しきい値電圧に依存していることは容易に理解できると思います。
 また、反転している時の傾きはアナログ特性の増幅率 Av になりますので、
インバータ回路の傾きは、増幅率 Av が大きい=ソース接地回路の傾きより傾斜がきつい
ということも分かります。
 なお、インバータ回路はデジタル回路の基本回路ですが、特性として利用している
入出力電圧はアナログ回路で注目しているところと全く違うことに注意してください。

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ソース接地回路(20)

(5)ソース抵抗
 ソース接地回路のソースと電源端子の間に抵抗を挟んだ回路を見ることがあります。
この抵抗はソース抵抗(RS)とよばれ、回路の熱暴走の防止が主な理由です。

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MOSトランジスタの動作(22)で、LSI 内のMOSトランジスタの温度と Ids(ということは gmも)の関係について、温度が上がると Ids が下がることが多いと書きましたが、これとは逆の場合もあります(MOSトランジスタ単体部品の特性によく見られます)。

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この場合、温度が上がると gm が増えるため、普通のソース接地回路では

回路に電流が流れる → MOS トランジスタの温度上昇 →  gm 増加
→ 回路の電流量増加  → MOS トランジスタの温度がさらに上昇 → gm 増加
→ 回路の電流量増加  …

とトランジスタが温度破壊するまでこの現象が続きます。
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たみひかのろ

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目標であったオペアンプの設計に6年かけて到達しました。ここからは応用的な内容を書ける限り書いていきたいと思います。

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