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8Tr2段オペアンプとは(1)

いよいよオペアンプの中身です。

オペアンプとなる回路には非常に多くの種類がありますが、まずは一番基本となる形を見ていきます。トランジスタを8つ使う2段の回路なので、仮に 8Tr2段オペアンプと呼びます。8Tr2段オペアンプは以下の形をしています。
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このオペアンプは大きく3つの部分に分けることができます。
それぞれ、入力段出力段位相補償といいます。
なお、IREF 端子でダイオード接続しているトランジスタは、オペアンプの外の回路で作成した基準電流(カレントミラー(6))をオペアンプに取り込むための電流源です。

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入力段は2つの入力信号を取り込む部分です。このうち、下に一つあるトランジスタはテイル電流源と呼ばれ、カレントミラーで作成されています。また、2つの入力信号がゲート端子となっているトランジスタを入力トランジスタといいます。今回の例では、入力トランジスタはNMOS トランジスタを用いていますが、PMOSトランジスタで作成することもできます。その場合は、オペアンプ全体をひっくり返した形になります。

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8Tr2段オペアンプとは(2)

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 入力段2つのソース接地回路テイル電流源からできています。それぞれのトランジスタの役割については後ほど説明します。

 出力段実はソース接地回路そのものです。入力段の出力がそのまま出力段の入力に接続されます。オペアンプの出力端子である OUT 端子から後段の回路等と大きな電流をやり取りする必要があるため、出力段のトランジスタサイズは通常大きいです。なお、OUT 端子と外部回路等を行き来する電流は駆動電流といいます。オペアンプはこの駆動電流を使って、外部回路等を動かすことになります。

 位相補償は負帰還回路(反転増幅回路(1)非反転増幅回路(1))を組んだときに起こる発振と呼ばれ現象を止めるためのものです。抵抗と容量を直列接続したものが一番簡単なものです。

 ざっと見てきましたが、8Tr2段オペアンプはソース接地回路が2段(入力段、出力段)重なった構造です。ソース接地回路の増幅率がざっくり100倍(=40dB)弱のため、8Tr2段オペアンプは 2段で100×100=10,000倍(=80dB)弱の増幅率が得られます。

8Tr2段オペアンプとは(3)

ここからは、入力段の詳細に戻ります。2つのソース接地回路とテイル電流源それぞれについてみていきます。

(1)なぜソース接地回路が2つあるのか?
 オペアンプとは(5)で入力が2つあり増幅率が高いのは特性をよくするために帰還という考え方を導入しやすくするためと見てきました。ここでは、2つの入力で差をとる重要な理由をもう一つ見ていきます。

まず、単純なソース接地回路を考えます。ソース接地回路単体でもDCゲインが高いため、入力信号がソース接地回路に入る前に何らかの原因(外乱ノイズと言います)で乱れてしまった場合、外乱ノイズが小さくても、出力信号は大きくゆがみます。

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外乱ノイズを抑えるのは難しいため、外乱ノイズが入っても正しく出力できるよう回路を組みます。8Tr2段オペアンプでは、同じサイズのソース接地回路を2つ並べ、2つの出力の差をとるようにしています。片方の入力に入力信号を入れ、もう片方には入力信号の中心電圧(入力バイアス電圧)のみを入力すると、普通のソース接地回路と同じ働きをします。
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8Tr2段オペアンプとは(4)

ここで外乱ノイズが入った発生した場合、2つの入力に同じだけ外乱ノイズが入るように(2本の配線を隣接させてレイアウトする等)努めれば、出力はまったくゆがまないことになります。

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このように差をとると、回路は外乱ノイズの影響を受けにくくなります。オペアンプの入力信号は遠い場所からオペアンプに来ることが多いため、入力段は必ず差をとる構造になっています。

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8Tr2段オペアンプとは(5)

あとは引き算回路の作り方です。といっても単純で、2つのカレントミラートランジスタの一つをダイオード接続するだけです。早速、動作原理を見てみましょう。

回路ですが、ダイオード接続をIN1側のカレントミラートランジスタに行い、反対側の出力を回路の出力としたものとします。
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ここで、IN1 の信号を ΔVIN1 、IN2 の信号を ΔVIN2 変化させます。入力トランジスタに流れる電流は IN1 側が ΔI1=gmΔVIN1 、IN2 側が ΔI2=gmΔVIN2 変化します(2つのソース接地回路のトランジスタサイズは同じとしましたのでgm=gm1=gm2です)。これに対し、カレントミラートランジスタに流れる電流は IN1 側は入力トランジスタで変わった電流 ΔI1 がそのまま流れますが、IN2 側は作成したカレントミラー回路により IN1 側のカレントミラーに流れている電流と同じ ΔI1 しか流れません
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8Tr2段オペアンプとは(6)

この状態で、IN2 側のソース接地回路に対して小信号等価回路を立ててみます(ソース接地回路(13))。

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カレントミラートランジスタも電流値がΔI1変化した形として整理すると、ソース接地回路の小信号等価回路(ソース接地回路(14))の電流源部分が2つの電流の差に置き換わった形になっています。電流がドレイン抵抗に流れることで出力になるため、出力電圧は

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2つの入力信号の変化の差とソース接地回路単体の増幅率の積で表される形となります。

 このように、2つのソース接地回路とダイオード接続を組み合わせることで、入力信号の変化の差を増幅することが可能になります。なお、この回路は差動対(さどうついと読みます)と呼ばれています。

8Tr2段オペアンプとは(7)

2)テイル電流源の役割
 ソース接地回路にはもう一つ大きな問題があります。それは、入力信号の中心電圧(入力バイアス電圧)が非常に精密なものになってしまうことです。ちょっとでもずれてしまうと、その値が数十倍という高い増幅率で増幅され、すぐに出力がクリップしてしまいます(ソース接地回路(3))。テイル電流源はこの問題を解決するために追加されます。テイル電流源の動作原理を見てみましょう。
 入力信号が無信号の時、テイル電流源に流れる電流を I とすると、それぞれのソース接地回路には半分の I/2 の電流が均等に流れます(2つのソース接地回路のトランジスタサイズが同じなため)。この時、入力バイアス電圧が 1.2V でテイル電流源のドレイン電圧が 0.3V だったとしましょう(Vgs=0.9V)。
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ここで、入力バイアス電圧が 2.5V に上がると、入力トランジスタに大きな電流が流れようとします(Vgs→2.2V)。しかしテイル電流源トランジスタの Vds 特性から、テイル電流源の電流が増えると、テイル電流源のドレイン電圧は上がります。その結果、入力トランジスタの Vgs は元の値に戻り、流れる電流も Vin=1.2V の時とほぼ同じ値になります。
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さらに、カレントミラートランジスタに流れる電流がほぼ同じなので、出力信号の中心電圧(出力バイアス電圧)もほぼ同じ値になります。こうして、テイル電流源により、入力バイアス電圧を変化させても出力バイアス電圧を一定に保ち、クリッピングを防止することができます(ただし、入力バイアス電圧が入力電圧範囲と呼ばれる範囲を外れるとこの関係が崩れ、正常に動作しなくなります)。
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目標であったオペアンプの設計に6年かけて到達しました。ここからは応用的な内容を書ける限り書いていきたいと思います。

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