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オペアンプの仕様(1)

次にオペアンプの仕様を見ていきます。

オペアンプの性能である仕様が理解できないと設計はもちろん困難になります。今回例として市販されているオペアンプの仕様(大抵のものはデータシートとしてダウンロードできます)を見ながら説明していきたいと思います。

今回例として挙げるデータシート

(1) 絶対最大定格
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設計値というよりプロセス(MOSトランジスタの動作(17))によって決まる「この値を一瞬でも超えるとIC が壊れる」ことになるものを絶対最大定格といいます。
ユーザーが入力することになる電圧としては、電源電圧、入力は2つあるため、単体としての入力電圧の限界と2つの入力電圧の差の限界が書かれています。
許容損失は、部品の性能を維持できる温度を超えない最大の消費電力のことです。ICを動作させるとICに掛けた電源電圧とICを流れる消費電流により電力が発生し、それにより発熱します。この熱により内部の温度がある値(プロセスによって決まります)を超えるとICは熱破壊を起こします。
動作温度は ICを動作させるときの周囲の温度、保存温度は電圧を掛けない状態で放置保存可能な温度の規定になります。

これら絶対最大定格はCMOSのプロセスを選定する上で重要な仕様になります。
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オペアンプの仕様(2)

(2)電気的特性

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次に電気的特性です。
これらの値は、プロセスで決まる値や設計値等から成り立っています。このオペアンプを使って回路を組む際、その回路の仕様を満たすかどうかを検討する際に使う値になります。

入力オフセット電圧
 MOSトランジスタの動作(19)で見たとおり、ランダムばらつきにより差動対8Tr2段オペアンプとは(6))の2つのソース接地回路のトランジスタサイズ W, L 値が同じになりません。W, L 値の違いは入力バイアスの差になって現れます。この入力バイアスの差入力オフセット電圧といいます。入力オフセット電圧があると、2つの入力に同じ電圧を入れても出力電圧が発生してしまいます。この出力電圧をなくすためには、2つの入力に入力オフセット電圧に相当する直流電圧差を入力する必要があります。

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 入力オフセット電圧はランダムばらつきにより発生するため、その値がオペアンプごと違います。従って、表記されるのは最大値のみです。上の表では4.0mVとありますが、これは絶対値の最大が 4.0mV、つまり±4.0mV ということになります(正確には標準正規分布で3σ(99.7%検定)になる値を用いることが一般的です)。

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オペアンプの仕様(3)

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入力バイアス電流、入力オフセット電流
 入力バイアス電流は入力端子に流れる直流電流量です。入力端子は MOS トランジスタのゲート端子になるので、入力バイアス電流はほぼゼロです。入力オフセット電流は2つの入力端子に流れる直流電流量の差ですが、入力バイアス電流がほぼゼロなため、入力オフセット電流もほぼゼロです。なお、この2つの電流値はバイポーラトランジスタで構成されたオペアンプの時などには重要な値となります。

オペアンプの仕様(4)

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出力ハイ電圧、出力ロー電圧
 出力できる電圧範囲の項目です。これには、歪むことなく出力できる電圧の範囲と歪んでもいいのでとにかく出力できる電圧の範囲の2つの考え方があります。この表の値は後者と考えられ、最大値が出力ハイ電圧、最小値が出力ロー電圧となっています。なお、これらの値はオペアンプの出力端子が外部回路とどれくらいの電流をやり取りするかで変化し、電流量が大きくなると電圧範囲が狭くなり、ある値を超えると急激に悪くなります(トランジスタがそれ以上の電流を流せないため)。

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これに対し、歪むことなく出力できる範囲を設計では出力電圧範囲と呼びます。この出力電圧範囲は通常電源電圧からオーバードライブ電圧ドレイン抵抗とは?(1))を引いた値になります。オーバードライブ電圧を超えると、ドレイン抵抗が急激に減少し増幅率が下がることで大きく歪みます。

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オペアンプの仕様(5)

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出力ソース電流、出力シンク電流
(この項目に電流値が3つあるのは、消費電流値が違う3つのタイプを一度に載せているためです)
 駆動電流の項目です。オペアンプから出て行く方向の電流が出力ソース電流、オペアンプに入っていく方向の電流が出力シンク電流です。

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通常、出力ソース電流と出力シンク電流のどちらかが大きくなっています。これは 8Tr2段オペアンプでもそうですが、片方がカレントミラートランジスタで、片方が入力段の出力が接続されたトランジスタだからです。

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なお、電流値は温度に大きく影響を受けます。今回、出力シンク電流が大きく影響を受け、温度が上がると電流量が大きく減少します(MOS トランジスタの動作(22))。出力ソース電流側はカレントミラートランジスタということもありほとんど変化していません。

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オペアンプの仕様(6)

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(同相)入力電圧範囲
入力バイアス電圧(入力信号の中心電圧)として入力可能な電圧範囲です。ただ、非反転増幅回路(非反転増幅回路とは(1))などのようにオペアンプの2つの入力に同じ形の交流信号が入力される回路の場合は、入力信号自体の電圧範囲となります。
入力電圧範囲は内部の入力段の構造によって決まるため、設計ではどのような入力信号が入力されるかによって入力段の構造を決めていくことになります。
詳細は 8Tr2段オペアンプの設計(8)に回しますが、今回のオペアンプは入力トランジスタがPMOSトランジスタのため、入力電圧範囲はVSSよりの値となっております。

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オペアンプの仕様(7)

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スルーレート
 出力電圧がどれだけ早く変化できるかの指標の一つです。入力電圧を急激に(通常は矩形波=パルス波状に)変化させた際の出力電圧の変化を測定します。スルーレートの場合、1usで何V出力が変化するか?(単位:V/us)を測定します。スルーレートは出力端子にどれだけの負荷容量をつけるかで変わるため必ず記載があります。このデータシートでは、CL=20pF となっています(この負荷容量をあえて接続して測定しているということです)。

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このデータシートには入力信号の変化が大振幅の波形と小振幅の波形が記載されています。大振幅のスルーレートはテイル電流源の電流値と位相補償容量の値で決まるため、立上がり(rise といいます)と立下り(fall といいます)の波形がほぼ同じになっています。小振幅の波形は出力信号の安定度が確認できます。今回のオペアンプの位相余裕が50°となっている(次項目で説明します)ため、出力が変化した後にリンギングと呼ばれる出力波形の乱れが2回弱発生しています(このあたりの詳細は 8Tr2段オペアンプの設計(24)で)。

オペアンプの仕様(8)

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電圧利得、帯域幅
 いわゆる周波数特性(F特)の項目(RCフィルタとは?(17)ソース接地回路(31))です。この項目も負荷容量に依存しますので、CL=20pF の記載があります。

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 電圧利得はDCゲインソース接地回路(29))、帯域幅は開ループ電圧利得(オペアンプではオペアンプ単体のことを開ループと表現します)が0dBのところであるゼロクロス周波数のことと思います。このグラフには位相のものも載っており、実際の回路(負帰還回路)を組んだ際に重要になる安定度を示す位相余裕が50°と記載されております。

オペアンプの仕様(9)

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電源電圧除去比(PSRR)
 電源電圧にノイズがあった場合、ノイズをどれだけ取り除けるか?の指標です。実際の電源電圧は意外と“汚く“、直流電圧源に見られる通称ハムノイズ(低周波ノイズ)やスイッチング電源に見られるスイッチングノイズ(高周波ノイズ)などいろいろなノイズが含まれています。

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このようなノイズが電源から入った場合、どれくらい出力に“もれてしまう”かを表すのが PSRR(Power Supply Rejection Ratio)です。PSRR の値は入出力振幅の比をデシベル表記で表し、マイナスの符号をつけたものとなります。つまり、値が大きいほどPSRRの性能が高い(電源ノイズが出力にもれない)ことを示します。

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PSRRは電源に入ったノイズの周波数に大きく依存します。従って、カタログにはPSRRの周波数特性が記載されています。

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ノイズの周波数が高いと寄生容量により内部にノイズが“入り込んでしまう”ためPSRRは悪化します。低周波でのPSRRは入力段の差動対の非対称性(ランダムばらつき等)の程度を表し、通常 80dB 程度になります。

オペアンプの仕様(10)

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同相弁別比(CMRR)
 オペアンプの入力信号は中心電圧が変わってもテイル電流源により出力にはほとんど影響しないと説明しました(8Tr2段オペアンプとは(7))。ただ入力信号の中心電圧の影響はゼロではありません。この影響度を示すのがCMRR(Common-Mode Rejection Ratio)です。オペアンプの2つの入力に同じ信号を入れた際、出力にどの程度“増幅される”のかを考えます。このときの入出力電圧の比を同相利得 Acm(これまで利得と呼んでいたものは正確には差動利得 Ad といいます)といい、差動利得との比のデシベル表記がCMRRになります。CMRRも値が大きいと性能がいい(同相信号の影響が小さい)ということになります。
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CMRRも入力信号の周波数に大きく依存します。カタログ記載の周波数特性を見てみると、

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入力信号が高周波の時にはCMRRが悪化します。これは、入力段のテイル電流源のドレイン端子-電源間に付く寄生容量により、入力段に流れる電流が増えてしまうためです。低周波での特性は、入力段の差動対の非対称性(ランダムばらつき等)により決まり、通常 80dB 程度になります。

消費電流
 出力電流(=駆動電流)が最小の状態(通常ゼロ)で回路全体に流れている電流値です。この値が小さいほど省エネということになります。消費電流値は駆動電流値と深い関係があり、駆動電流値が大きいほど消費電流も大きくなります。これは、安定して回路を動作させるための設計上の処置です。

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目標であったオペアンプの設計に6年かけて到達しました。ここからは応用的な内容を書ける限り書いていきたいと思います。

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