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反転増幅回路とは?(1)

オペアンプとは?(5)で、帰還という考え方を使うと書きましたが、この帰還は分かりにくいと言われます。そこでまず、帰還を使った回路例を見てもらい、おおよそのイメージを持ってもらえればと思います。

オペアンプを使った基本回路として反転増幅回路非反転増幅回路の2つが有名ですので、動作をそれぞれ見ていきたいと思います。

反転増幅回路
反転増幅回路はオペアンプのほかに抵抗が2本出てきます。
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抵抗2本(R1,R2)を直列につなぎ、R1の片側を入力端子(Vin), R2 の片側を出力端子(Vout)R1, R2 のつなぎ目(Vx)をオペアンプの-側入力端子に接続します。オペアンプの+側入力端子には基準電圧(VB)を外部から与えます。

このように回路を組むと、出力電圧は入力電圧の R2/R1 倍、つまり R1 の抵抗値と R2 の抵抗値の比だけ倍加されます。

例えば、R1=10kΩ, R2=20kΩとすると、出力電圧は入力電圧の2倍になります。

なお、上の式の R2/R1 の前に“-“がついています。これは波形が上下さかさまになることを表しています。(正確にはsin(x+180°)=-sin(x) のマイナスです)
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反転増幅回路とは?(2)

(1)での図にはもう一つポイントがあります。

それは VB=0V を+側入力端子に加えていることです。これにより、この反転増幅回路の基準電圧は 0V になります。ここで、入力電圧(Vin)のうち2倍になるのは基準電圧からの差分です。この VB の役割が分かるような例を2つ載せます。
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上の例では 入力信号 Vin の中心と VB の値が 1V と同じですので、出力信号 Vout の中心も 1V となり、波の部分だけが上下さかさまで3倍になっています。下の例では、Vin の中心が 1V なのに対し、VB の値は 0V と違っています。この場合、Vin - VB = 1V も入力信号とみなされるため、Vout の中心は1V を2倍して上下さかさまにした -2V を VB=0V に加えた -2V になります。波の部分も同様にして考えることができます。

反転増幅回路とは?(3)

どうしてこのような動作になるか見てみましょう。
回路として、R1=10kΩ, R2=20kΩ, VB=0V, オペアンプの増幅率を 1000倍とします。

まず、無信号時を考えます。
VB=Vin=0V が無信号状態です。この時出力信号は Vout=-R2/R1*Vin=0V と計算されます。Vin=Vout=0V ですから、Vx も Vx=0V となり、抵抗 R1, R2 に流れる電流も I1=I2=0A となります。Vx=VB=0V ですので、オペアンプでの計算式を用いても、Vout=(VB-Vx)*1000=0V と問題ありません。つまり、この状態が無信号時の電圧・電流を示すことになります。

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なお、オペアンプの+側、-側入力端子に流れる電流も考えられます。ただ CMOS アナログ回路ではIx=IB=0A になります。これは、CMOS アナログ回路で使用する MOS トランジスタの特性によるものです。(MOS トランジスタのゲート端子をオペアンプの±入力端子に使うためです)。

反転増幅回路とは?(4)

無信号状態から入力信号を入れて見ましょう。Vin=1V としてみます。
(ここから示す計算は動作を理解していただくためのもので、実際の動作とは違いますのでご注意ください)
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Vx=0V のままだとすると、R1 には I1=(1V-0V)/10kΩ=100uA=0.1mA=0.0001A の電流が流れます。(3)で書きましたとおり、-側入力端子に流れる電流 Ix は MOS トランジスタの特性によりいつも Ix=0A なります。つまり、R1 に流れる電流はそのまま、すべて R2 に流れることになります。
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R2 に 100uA 流れると R2 には R2*I2=20kΩ*100uA=2V の電圧差が発生します。Vx=0V のままで、Vx から Vout に向かって電流が流れていることから Vout は 0V から 2V 低い Vout=-2V となります。

反転増幅回路とは?(5)

(4)の計算で -2倍になってしまいました。それにしても、オペアンプはいったい何をしていたのでしょう?
それを知るべくもう少し正確な計算を試みます。(ここから示す計算は動作を理解していただくためのもので、実際の動作とは違いますのでご注意ください)

オペアンプの増幅率は 1000倍ですので、Vout=-2V となる Vx の電圧を逆算すると Vx=0.002V になります((VB-Vx)*1000=Vout=(0V-0.002V)*1000=-2V)。
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Vx=0.002V とすると R1 の両端には 1V-0.002V=0.998V の電圧差が発生することになりますので、I1=0.998V/10kΩ=99.8uA になります。この電流はそのまま R2 に流れ込みますので、R2 の両端には 99.8uA*20kΩ=1.996V の電圧差が発生します。Vx=0.002V ですので、Vout=0.002V-1.996V=-1.994V となります。

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反転増幅回路とは?(6)

(5)の計算で出力電圧がかなり正確になりました。どうせですから、Vout=-1.994V からもう一回逆算して計算してみます。結果は以下の通りです。
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この結果は Vout=-1.994V からほとんど変わっていません。
つまり、オペアンプの動作まで考慮するとおおよそ Vout=-1.994V になります。

反転増幅回路とは?(7)

(6)の計算で Vout=-1.994V になりました。といっても、(4)までの計算結果 Vout=-2V とほとんど同じ値です。そこで、通常は Vout=-2V でよしとしてしまいます。

この”よし”とする計算には一つ重要なポイントがあります。それは、

オペアンプの+側入力端子と-側入力端子の電圧を同じとしてしまおう

という考え方です。

Vout=-1.994V と Vout=-2V を同じにしようと言うならばVx=0.002V も Vx=VB=0V と見てしまおうというものです。

この考え方は仮想接地イマジナリーショート)と呼ばれています。計算を簡単にするために用いられる考え方です。

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反転増幅回路とは?(8)

(7)にて、仮想接地イマジナリーショート)まで書きました。この、仮想接地イマジナリーショート)の考え方はよく使われますが、そのためにはオペアンプの増幅率が大きい必要があります。これを実際に計算して確かめてみましょう。

回路は R1=10kΩ, R2=20kΩ とし、オペアンプの増幅率を 10000倍、1000倍、100倍、10倍としてみます。計算方法は(5)のものを使って、小数点第3位が同じになるまで、逆算を続けます。(ここから示す計算は動作を理解していただくためのもので、実際の動作とは違いますのでご注意ください
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まず、10000倍、1000倍の結果です(100倍、10倍は次回ということで)。図において、①が逆算1回目、②が逆算2回目…ということです。

オペアンプの増幅率が 10000倍の時
Vx=0.000V, Vout=-1.999V
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オペアンプの増幅率が 1000倍の時
Vx=0.002V, Vout=-1.994V
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反転増幅回路とは?(9)

前回に続いて逆算です。

オペアンプの増幅率が 100倍の時
Vx=0.019V, Vout=-1.942V
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オペアンプの増幅率が 10倍の時
Vx=0.154V, Vout=-1.538V
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逆算はここまでとして、次回まとめます。

反転増幅回路とは?(10)

長々逆算に使ってしまい、失礼いたしました。

オペアンプの増幅率と Vx, Vout の結果を再掲しますと、

オペアンプの増幅率が 10倍の時  Vx=0.154V, Vout=-1.538V
オペアンプの増幅率が 100倍の時  Vx=0.019V, Vout=-1.942V
オペアンプの増幅率が 1000倍の時  Vx=0.002V, Vout=-1.994V
オペアンプの増幅率が 10000倍の時 Vx=0.000V, Vout=-1.999V

となります。この結果から、

1.Vout の正確な電圧が、理想値である -2V といっていいのはオペアンプの増幅率が1000倍より大きいときこの時、Vx の値もほぼ 0V, つまり仮想接地が成り立っています
2.オペアンプの増幅率を10倍大きくすると、Vout の正確な値と理想値 -2V とのずれ、ならびに、Vx の正確な値と理想値 0V とのずれは一桁下がります

がわかります。帰還(正確には負帰還)を使う上で重要な特徴です。

反転増幅回路とは?(11)

帰還において、オペアンプの増幅率が大きい必要があることを見てきました。もうひとつ、大切な性質を反転増幅回路を使ってみていきます。

それは、出力電圧 Vout が何らかの理由で所望の値からずれてしまった場合に現れます。

例えば、オペアンプの増幅率が 1000倍のときの計算値
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から、出力電圧 Vout が Vout=-1.991V にずれてしまったとします。これまでの逆算ではオペアンプの動作を先に考えましたが、実際にはオペアンプが動作する前に、抵抗による分圧比によって Vx の値が決定してしまいます

以下の図に示した計算式から Vout=-1.991V → Vx=0.003Vに持ち上がりますVx=0.003V に上がってからオペアンプが動作を始め、その結果 Vout=-3V になろうと出力電圧が Vout=-1.991V から大きく下がります。Vout=-1.991V から下がり始めると、Vx も抵抗によってつられて下がり始めます。ここで、Vout=-3V の前には、Vout=-1.994V があり、かつ、このときVx=0.002V となるため、抵抗比とオペアンプがつりあいます。結局、元の電圧に戻って電圧変化が止まり安定します。(ここでは、動作を容易にするために過渡応答は無視します)
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反転増幅回路とは?(12)

(11)では -1.994V からちょっと電圧を上げました。今回は逆に電圧をちょっと下げて -1.997V にしてみます。こちらも同じく、Vout=-1.994V, Vx=0.002V で電圧変化が止まり安定します。
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反転増幅回路とは?(13)

(11),(12)で見てきたように、反転増幅回路には出力信号が所望の値からずれたとき、所望の値に戻るような自動調整機能があります。

さて、さも当たり前のように、所望の値からずれたら? と書きましたが、ずれてしまう原因はなんでしょうか?

実は、オペアンプ自身がそもそもずれた電圧を出そうとしますオペアンプとは?(5)にある通り、オペアンプ単体の出力はひずみますつまり、期待する値からずれているのです。そこで、抵抗2本を使って自動調節機能を持たせ、使用できる回路にした…といった流れになります。

使用できる回路になるには、オペアンプ単体の増幅率が大きい必要があります。(10)にてまとめた通り、電圧を理想値にするにはオペアンプの増幅率が大事です。ここで、実際の値と理想値、ならびに、ひずむといった現象はすべて、期待する電圧値からのずれです。つまり、これらずれを改善する自動調節機能は、オペアンプ単体の増幅率が大きければ大きいほど、より強く精度よく働くということにつながります。

なお、この自動調節機能については負帰還を使う上で大切な結論です。
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目標であったオペアンプの設計に6年かけて到達しました。ここからは応用的な内容を書ける限り書いていきたいと思います。

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